すな粉妄想日記

瞳を閉じて、肌を触れ合わせる。

柔らかな感触と温かさが
トールの胸を熱くした。

「………ん…」

愛しい相手の存在を確かめるように
抱きしめた腕に力を込める。

少年らしい、細く華奢な身体。

どれだけの思いを、頼りなげな
その背中に背負って来たのか……

自分の選択が間違っていたとは考えないが、
弟の人生を大きく変えてしまった事実は否定できない。

ファクトの後継者という地位は、
輝かしいものであると同時に、様々な負担が圧し掛かる。

父、カインの厳格さのせいもあるだろう。

長男として、ある程度心構えのできていた自分と違い、
ユーゴにとっては唐突に降りかかった困難だったかもしれない。

弟の性格から、おそらくそれを受け入れ、
認められようと必死に努力してきたはずだ。

どれ程の苦労を積み重ねてきたのか……

『…許さない…』

再会した時の、自分に向けられた眼差しを思う。

『絶対に、許さないぞ…！』

憎しみの奥に垣間見えた、悲しげな光。

孤独で冷たい色の……

『どうして、あんたは……』

自分で選んだ人生に、後悔はしていない。

けれども、弟の心をここまで追い詰めてしまったのは、
紛れもない自分の罪だ。

それを…償いたい。

今まで弟を傷つけてきた、罪を。

「……ユーゴ」

今までの想いを込めて、その名を呼ぶ。

「兄さん……」

相手もそれに答えるように呼び返す。

「お前が…大好きだ」

トールはその腕の中へ居場所を与えた。

弟が―自分は愛されていると、
確かに実感できる場所を。