すな粉妄想日記

チャイムが鳴って３０秒もしないうちに
玄関のドアが開いた。

「ユーゴ！！」

現実で勇者３０でもやっているのかと
思わんばかりの早さだ。

そうして現れたトールの表情が
満面の笑顔から驚愕のそれへと変わるのに、
これまた３０秒とかからなかった。

「……ダレス…！」

なんでお前が、と言いかけたのを
すんでのところで押し留める。

ここにいる理由は当然、
弟を送って来たという事以外ありえないからだ。

むしろ、評価すべき行動である。

どんなに腹立たしくとも、
保護者としては礼を言わねばなるまい。

トールは弟の姿を視界に入れる事で
平静を保つ事に成功した。

大きく深呼吸をして、息を整える。

そこまでしないと駄目なのかと
ツッコミたくなる有様だったが…

「俺の弟が、迷惑をかけたな。送ってくれた礼を言う」

見事な兄らしい台詞であった。

「いや…それには及ばない」

ダレスは笑って返事を返す。

トールの胸中を察し、
吹き出しそうになるのを堪えながら。

そして少しばかり意地悪をしてやろうと、
言葉を続けた。

「私にとってもユーゴは…」

おもむろに手を伸ばし、
相手の肩を抱く。

「大切な恋人だからな」

「…っ！？」

ユーゴの顔がみるみるうちに赤くなった。

トールの顔はみるみるうちに青ざめた。